Allure

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「お前がそんなふうに心配してくれんなら、うれしくってもっと元気出ちまうな」 「はぁッ!?」  なら俺は何の為にここにいるんだという調子で、波濤はますます苦虫を潰したような表情で隣の男を軽く睨んでみせた。 ◇    ◇    ◇  今夜は相当酔っ払っちまったから家まで送ってくれないか――同僚ホストであるこの男からそう頼み込まれたのは、イベントが終了したロッカールームでのことだ。数ある催しの中でも大々的なハロウィンの夜のお祭り騒ぎがハネた直後のことだ。  客からの贈り物やら荷物も多いことだし、いつもよりも張り切って飲んだので足元もおぼつかない、だから家まで一緒に付いて来てくれないかなどと少し呂律の回らない口調で頼まれた。  大量に飲んだのは誰しも同じなのに何で俺が――とも思ったが、彼があまりにも虚ろな表情で頼み込んでくるので、断り切れなかったというのが実のところだった。  それはともかくとして、波濤には彼を自宅に送るのを躊躇(ちゅうちょ)する理由がもうひとつあった。
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