Daydream Candy

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 逃げる暇もなく不意を突くように軽く唇を重ね合わされて、波濤はギョッとしたように瞳を見開いた。 「何しやがる、てめっ……何考えてっ……んだって……!」  抵抗の言葉をまるで無視するように、龍は顎先に添えていた指を首筋へと移動する。まるで慣れた手つきでネクタイの結び目が解かれるのを感じても、驚きが先に立って振り払うこともできずにいた。  器用にそのタイを乱しつつ、もう片方の手では長財布から札束を覗かせる。  波濤にしてみれば、自身自慢のマジックの技をもしのぐような巧みさだ。どんな技術を持っていやがる――と、つい邪な興味を引かれている内に、いつの間に外されたのか、シャツのボタンから覗いた胸板へと札びらを押し付けられて、更に唖然としてしまった。 「昨夜のあの男、あいつと寝たんだろ? あいつだけじゃねえよな? 俺が新宿店(みせ)に来てから一ヶ月、お前が野郎と一緒にアフターに消えるの三回くらい見たっけな? しかも毎度違う相手。器用な男だな」 「――――ッ」 「女を抱くだけじゃなくて野郎の相手もお手のモンか。さすがナンバーワン――なんて褒める気にもならねえな」 「てめ……ェっ、何をっ……」
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