Nightmare Drop

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 実に波濤にはそんな客が数人いたのは確かであった。男性としての格好良さ、ワイルドさというよりも色香が先に立つような彼の容姿は、そちらが目当ての客にはたまらない相手なのだろう。無論、この枕営業に於いても、客の男らの誰もが金に糸目を付けることはなかった。  そんな数ある客の中でも高瀬はいつも紳士的で、波濤を大切に扱ってくれていた。夜を共にしたい時は事前にそう言ってくれていたし、だから今日は突然のことで少々驚かされてしまったわけだ。 ――が、もっとびっくりさせられたのはこの直後に高瀬から飛び出した言葉だった。 「ねえ波濤――今日はその格好のまま抱きたい」 「え!? あの、えっと……でもこれ……せっかくの着物が勿体ないんじゃ……」  こんな格好で事に及んだら、皺やら汗やら、はたまたもっと別の汚れやらで台無しになりそうなのは目に見えている。だが、高瀬はそんなことはまるで気にも止めずといった調子で、こう続けた。 「そんなもの、またいくらでも選んであげるさ。これは単なる僕の趣味……なんだけれど、せっかく着物を着ているんだ。今夜は付き合ってはもらえないかい?」
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