Night Emperor

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Night Emperor

「ホストになれ――だ?」  驚き顔というよりは呆れ返ったような表情で、目の前の男を凝視した。深い夜の闇が独特の蒼さに変わる頃、真夏の空は刻一刻と白み始めた――そんな時分だ。 「そう、お前さんも忙しい身だってことは承知してるよ。だが、自分の店で働いてみるのもいい経験になると思うんだがね」  悪びれた様子もなく、悪戯そうに瞳を緩めるこの男とは幼少の頃からの腐れ縁の仲だ。平たく言ってしまえば『親友』ともいえる粟津帝斗(あわづ ていと)を前にして、氷川白夜(ひかわ びゃくや)は思い切り怪訝そうに眉をしかめてみせた。 「自分の店――っつってもな、経営者はお前だろうが」 「まあ、そうさ。僕は実質上の経営者ではあるが、でも名義はお前さんのものだろう?」  鼻先に笑みをたずさえて、人の悪いような悪戯顔で面白おかしくそう語る。帝斗の真意が分からずに、氷川はますますもって険しい表情で首を傾げた。 「唐突すぎて話にならんな。ちゃんと分かるように説明してもらおうか」 「だから言ってるじゃない。現場を知ることも経営者には必要だってことさ」  氷川はしばらく考え込んでから、 「――何か店で問題でも抱えてるのか?」  そう訊いた。
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