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キキーーーーッ!
その音に、失いかけた意識が引き戻された。
バタン!バタン!
乗用車の扉の閉まる音が二度聞こえた。
その後、誰かの声が聞こえてくる。
「危ねえなぁ」
「やだ、この子、なんで逃げないの?」
「おい、どいてくれないか」
ニャー。
「お、おい、こら、まて」
その言葉の後、僕の目の前に、あの猫と、そして見知らぬ男女の姿が現れた。
「な、なになに?!」
「おい、大丈夫か」
黒猫の先に僕を見止めた二人は、ゆっくりとそこから引き上げてくれた。
女の方が、直ぐに電話をしてくれた。救急車を呼んでくれたのだ。
男の方は、僕の頭元でしゃがみ込み、必死に声を掛けてくれている。
限界を超えていた僕は、やっとの思いで崖の下を指差して、そこで意識が切れてしまった。
意識が切れる直前、背中を向けていた黒猫と目が合った。
猫は、そのまま前を向くと、ゆっくりとその場を離れていった。
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