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秘密
その日から、私とオンの生活が始まった。
元々飼い猫だった私は、日々の空腹に耐えることが辛かった。
その事を告げると、オンは私に言った。
「食べ物を調達してきます。でも、一つだけお願いがあります。決して私に付いてこないで下さい。必ずここで待っていてください。必ずですよ」
言われるままに待っていると、しばらくしてオンは何かを口にくわえて走ってきた。
「これ、どうしたの?」
それは、私の飼い主だった人間が、時々私に食べさせてくれた、刺身というものだった。
ビニールとかいう、食べられないものに包まれたそれを、オンは私の目の前に置いた。
爪でそれを剥がして、一枚口に含む。
こんなおいしい刺身は初めてだと感じたのは、ずっと空腹だったからなのかもしれない。
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