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あの日、僕、恩田悠(20)は、事故に遭った。
十月の寒い朝。
対向車線から突っ込んできた大型ダンプ。
運転席には父(51)、その後ろには僕の彼女(19)。
助手席に母(46)、その後ろには僕がいた。
そのダンプを避けて、父が切ったハンドルの先は、高さ五メートル程の崖だった。
衝撃で、偶然手に引っ掛かったドアノブを引いた事で、僕は車外に放り出され、途中の木に引っ掛かった。
父、母、彼女を乗せたまま、車は崖下で止まった。
全身に痛みを覚えながらも、僕は助けを求めようと、必死に崖を登った。
しかし、ガードレールまであと少しと言うところで、痛みと体力の限界が来た。
意識を失いかけたその時、道路上で何かが動いた。
そこにいたのは、体長三十センチ程の、真っ黒な猫だ。
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