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◆◆◆
松下と別れた後、田中は松下の小さな悲鳴が聞こえ踵を返しドレスルームへと急いだ。
途中、声の荒げた男の声が聞こえてくる。
どうやら、松下の元彼が彼女に何かを言っているようだった。
「アイツが居たから、俺のプロポーズずっと保留にしてたのか?」
「お前……アイツと俺、二股かけてたのかよ?」
アイツ……
田中は、さっきの自分達のやり取りをみて、篠崎が勘違いをしていると気づき仲裁に入ろうとした。
「奈々子!」
膝から崩れ落ちる松下に気づき、篠崎が手を伸ばそうとしたより先に、田中は松下の体を支えていた。
「おい! 大丈夫か? 松下」
田中は、ここ数日、ちゃんと食事をとらず、寝ていなさそうな松下を気にはかけていた。だから、さっきも仕事で通りかかったドレスルームの中を覗いていた。
「無理するからだ……馬鹿が……」
意識を失った松下を、田中は抱え上げた。
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