一度目の背中

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頑張れば頑張るほど、周りに認められるほど一日が仕事に追われていき、自分の為に取れる時間が少なくなっていく。 普段、ゆっくり会えないからと、泊りに来てくれてた武が待つベットへ体を横たえた。 「疲れたよ……もう、仕事辞めようかな……」 「じゃ、専業主婦になる?」 「ふふ、それもいいな」 「ば~か、あと1年ぐらい待つよ」 「え……一年だけ?」 「俺をどれだけ待たすつもりだ? お前は」 クスクスと笑いあい、額に触れるだけのキスを落とした武と視線が合う。 奈々子は、武の背中に手を回した。大きくて広い背中に、安心感を覚える。奈々子はゆっくりと眠りについた。 「……大好き、武」 そんな奈々子をみて、武は「俺も」と返してくれる。 ずっとこんな日が、続くと思っていた。 そしてこの日々の先、夫婦としてこんな日々を過ごすのだと、当たり前のように思っていた。 なのに。 「ごめん。他に好きな奴ができたんだ」 終わりは突然やってきた。
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