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「大丈夫か?」
「はは、すみません。田中部長には、いつも情けないところをみられてしまって……」
会社の近くの公園。
遊具が少しとベンチが、二つ程度の小さな公園の為、夜になると誰もいない。
田中は、奈々子をゆっくりとベンチに腰を掛けさせた。
武と離れ、すっかり涙を乾いた奈々子は乾いた笑いを浮かべる。
「俺にそんなこと気にするな。俺が聞いてるのは、お前が大丈夫か大丈夫じゃないかだ」
奈々子は、弱い所は誰にも見られたくなかった。
立派に仕事もこなせる、自立した女性でいたかった。
元カレの事で、他人に涙を見せるなんて……奈々子はしたくなかった。
でも、既に田中には弱い所をみられている。
無理に強がる必要もなかった。
「……。大丈夫じゃないです……」
「素直でよろしい」
「子ども扱い……しないでください……」
そう微笑む奈々子を、田中は優しく抱きしめ、ゆっくりと頭を撫でてくれる。
「子供扱いなんてしてないよ。ただ、俺の前で素直になってくれるのが嬉しいだけだ」
「なんですか……それ」
「ん……今は、いいよ」
それ以上何を言わず田中は、奈々子に胸を貸した。
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