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それらがユラユラと燃える様は幻想的であり、眺めていて飽きなかったものだ。 『火の番』には、ひとつ困った事がある。それは『顔が熱気で火照る』事だ。 火をくべる口は熱効率を上げるために、小さく作られている。だが、そこから外に来る熱気は凄かった。 時に団扇で風を送り、薪に酸素を供給しながら、ひたすらに湯が湧くのを待つ。 湯が湧いたかどうかは、くべた薪の本数で大体が分かる。だが、その日の気温の具合で変わることもあるから、途中で確認する必要があった。 とは言ううものの、湯船の表面に手を着けた程度では沸いたかどうかは分からない。何故なら暖かい水は全て表層に集まるからだ。 往々にして『沸いた』と思ったら下は冷たいままだった、という事もある。冬は特にそうだ。 そこで、板を使って軽く『湯揉み』をしてやる。要するに撹拌するのだ。こうしてやることで温度が均一になって『沸き具合』が分かる。 あらかた薪が燃え終わると、いよいよお湯が沸いた頃合いになる。 しかし、だからと言ってすぐに入れるわけではない。何しろ五右衛門風呂は下から直接に火で焚き上げるのだ。 それは言ってみれば『鍋』のようなものだから、風呂の底はかなりの温度になっているのだ。そのまま入れば足を火傷してしまう。     
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