理想の萌えシチュ

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 傾いた太陽の光が校舎の窓硝子に吸収され、圧縮されてから解放されたように、圧倒的な強さで人気(ひとけ)のなくなった教室を眩しく照らし出す。  たちまち世界は、オレンジのセロファンを重ねた色へと変化する。  窓を通して怒声とも歓声ともつかない声が耳の遠くに聞こえてきて見下ろすと、運動場の一番広い面積を使って練習しているラグビー部員達がスクラムを組んでいるのが見えた。  うちの高校のラグビー部、通称ビー部は野球でいうなら甲子園にあたる花園で優勝したこともあるほどの実績を持つ強豪校で、その練習はかなり厳しいことで有名だ。  沈みゆく眩しい夕陽に照らされた赤と白のボーダーのユニフォームは、そのラインが区別つかない程に赤みを帯びていた。グッと顎を下げて押し合う選手達はヘッドキャップしか見えず、背中の黒で書かれた背番号をひとつひとつ追っていく。  その中に、一際がたいのいい背中に貼りついた背番号8が見えた。  ーーそれが、私の幼馴染である青田(あおた) 浩二(こうじ)だった。
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