理想の萌えシチュ

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 小学生からの幼馴染である浩二は、今まで野球一筋だったにも関わらず、新入生への部活紹介でうちがラグビーの強豪校であることを知った途端、即座に入部を決めてしまった。  ビー部は高校のない土曜日を含めて週に6日も練習があり、もちろん夏休みや冬休みも関係なく、まともに連続して休めるのはテスト期間中とお正月の三ヶ日だけだった。それでも、何が楽しいのか知らないけど、浩二はどんどんラグビーの魅力にハマっていった。  それから二年が経ち、浩二は背番号8のユニフォームを着るようになった。ナンバーエイトはフォワードを最後方からコントロールして、統率する選手が付ける背番号で、スクラムの時には後方に運ばれたボールを手で運び出すこともあるらしい。体の大きさ、スピードとパワー、的確な判断力が必要とされ、フォワードの中で最も華があり、守備、攻撃の両面においてチームの中心となる、重要なポジションでもあるのだと浩二が以前に熱く説明してくれた。  普段は寡黙でぽつぽつとしか喋らない浩二が、ラグビーの話になった途端、まるで人が変わったように瞳をキラキラとさせて雄弁に語る。彼の語る話の半分……いや、3分の1ぐらいしか理解出来ないけど、それでもそんな浩二の話を聞くのは楽しかった。  「美唯(みい)、何見惚れてんのよ」  不意に掛けられた言葉にビクッとし、一瞬で現実に引き戻された。声のした方に振り向くと、正面に座っている倫子(ともこ)がポテチを手にしながら目を細め、ニタニタと笑みを浮かべてる。
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