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「み、見惚れるわけないじゃん! ただ下から声が聞こえてきたから、何してんのかと思って覗いてただけだし」
浩二と同じく小学生からの腐れ縁である山中 倫子は、なんでも話し合える家族のような存在だ。私たちは席が隣になった瞬間から同じ波長を感じ、すぐに友達になった。そのうちに、学校が終わってから公園で遊んだり、互いの家を行き来するようになったりして、一緒に遊んだり、時には勉強したりするだけでなく、初恋の男の子を互いに打ち明けたり、クラスの気になる男子の話で盛り上がったり、告白されたことをこっそり話したり、親には言えないような秘密まで共有していくうちにどんどん親密になっていった。
倫子は机に出してある、使うのがもったいないぐらい可愛いハート柄のついたウェットティッシュを引き抜いて手を拭くと、置かれたままのスマホに指で触れた。彼氏とのラブラブショットを背景にした画面が立ち上がって表れた時計を確認すると、スクバ(スクールバッグ)からメイクポーチを取り出し、鏡を開く。ビー部の部活終了まであと20分、メイク開始のホイッスルが鳴る。
いつもメイク直しに余念のない倫子は、私にもメイクしたら可愛くなるのにぃなんて言ってきたけど、何が悲しくて素顔見られ慣れてる幼馴染の為にメイクしなくちゃなんないのよ。合コンならもちろん気合い入れるけどさ。
「ふふっ、照れなくてもいいじゃーん、ほんとは気になってんじゃないのぉ?」
あぶらとり紙で念入りに鼻を押さえ、手早くファンデを手に取りながらも、チラチラと目線をこっちに向けてくる。
最近、倫子はやたらと私と浩二をくっけようとしている気があるんだよねぇ。
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