理想の萌えシチュ

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 高校に入学した早々、倫子は同じクラスになった蓮田(はすだ) 圭人(けいと)くんに一目惚れした。  蓮田くんも浩二と同じビー部なんだけど、筋肉質でがっしりした浩二とは違って、蓮田くんはすらっとした細マッチョタイプで、顔も私好みではないけどジャニ系のなかなかのイケメンで、一見ビー部には見えない。  いや、別にビー部のことをディスってるわけじゃないけど、ほらラグビーやってる人って筋肉ムキムキでがたいいい人ばっかってイメージだったから、意外で。でも後から知ったんだけど、ラグビーって一口に言ってもポジションによって役割とかあって、ハーフと呼ばれるポジションの人たちは、そこまでがたいがよくなくても務まるというか、逆に機敏性を求められるから蓮田くんみたいな体型の人も珍しくないみたい。昭和のスターみたいな凛々しい眉に精悍な顔つきの浩二とは、明るくてよく喋るところも含めて全然違っていた。  ビー部は授業が始まる前にがっつり朝練もあるから、大抵部員たちは教室に入った時点でかなり疲れてる。授業時間はほぼ寝てるか、ぼーっとしてるか、休み時間は寝てるか何か食べてるか。お昼はもちろん食べてるか寝てるか。いや、冗談じゃなくてマジで。  にも関わらず、倫子は持ち前の社交性と積極性と幼馴染である浩二という味方を引き入れ、蓮田くんとの仲を少しずつ縮めていった。気づけば私たちは一緒にお昼ご飯を食べるようになり、ビー部の練習を見に行ったり、わざわざ学外で行われる試合を応援するようになっていた。  試合での浩二と蓮田くんは、寝るか食うしか脳がない学校でのあの彼らとは180度違ってた。  スクラムを組んで体を激しくぶつけ合い、ボールを持って力強く走る浩二の姿に興奮が高まり、蓮田くんの正確なパス回しや相手チームを抜き去る俊敏な動きに思わず歓声を上げる。  ちょっと悔しいけど……そんな時の浩二はかっこいいと認めざるをえない。でもま、試合の時だけね……まぁ、練習の時もちょっと、かっこいいなって思うときもあるけど。ちょっとだけね。
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