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 自分を見ながら何か考え込んでいる真理愛を見て、本城はニコリと微笑み。そして、「さて」と言いながら立ち上がった。 「まあ、難しい話はこれくらいでいいでしょう。真理愛さんにここに来てもらったのはね、こんなかたっ苦しい議論を交わすためじゃない」  そう言って本城は、真理愛に向かって右手を差し出した。 「俺と一緒に、来てもらえますか?」    真理愛は差し出された手を、少しの間見つめ。それから、「は、はい」と、その手を取った。がっちりとして逞しく、でも何か、優しく包まれるような感触の手のひらだった。真理愛は、本城にエスコートでもされるような形で立ち上がり、本城のすぐ脇に並んだ。 「何よりもまず、見て欲しいんです。俺たちがここで、どんな生活をしているのか。ここにいる人たちが、どんな風に日々を過ごしているのかを。それを、真理愛さん自身の目で見て、確かめて欲しいんだ。俺たちが世間で言われてるような、野蛮な組織じゃないんだってことをね」  その言葉に含まれる本城の「自信」を、真理愛は感じていた。真理愛自身も、先ほど通ってきた「市場」の様子だけでも、本城の言うことが嘘ではないと、確信し始めていた。そして、真理愛は気付いた。  自分が、この本城という男のことを、「信じたい」と思い始めていることを。
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