プロローグ

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 ー20xx年ー  度重なる異常気象、各地で繰り返される内戦。地位と権力の奪い合いに終始する、不安定なままの政情。幾つものマイナス要因が重なり、世界は慢性的な食料不足に陥っていた。餓死者が世界の死因トップになるという異常事態になっても、誰一人具体的な解決策を見出せずにいた、そんな時。  アジアに本拠地を置くいち企業、ソーシャル・ギビング・サービス社が、画期的な食料大量生産技術を生み出した。元々遺伝子工学の分野では高い評価を受けていたソーシャル・ギビング・サービス(以下、SG社)だったが、この事により一気に世界的注目を浴びることに。株化は急上昇、世界の救世主と持てはやされた。  そして、各国の権力者たちも我先にと、SG社の技術と利権に群がり始め。世界の食料庫となったSG社は、いつしか裏で世界の実権を握るまでに成長した。それは同時に、SG社による実質的な長期独裁政権の始まりであった。  SG社は自社の食料生産技術を、一部の権力者が独占する形で提供し、持てる者と持たぬ者の格差は瞬く間に広がり。世界は富と食料を支配する上流階級と、配給による食料しか手に入らない貧困層とに二分化されていった。  そんな中、独裁政治に反旗を翻す者たちが出現、各地でゲリラ活動が始まり、富裕層の食料を強奪する事件が多発。この事態を受け、SG社は政治家と組んで、政権反対派、ゲリラ運動家たちの取締りを強化。結果、取り締まる権力者たちも反抗する勢力も、その手段を徐々に過激化させていくこととなり。世界は、一触即発の危機に陥りつつあった。  この物語は、そんな混沌に満ちた時代から始まる。
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