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「今度は、ここから入るから」
少女に見とれていた真理愛に、前を歩くゲリラが声をかけ、左側にある山肌を指差した。そこにはまた別の、洞窟の入り口のような大きな穴があり、そこに入っていくということなのだろう。よく見ると、山肌の斜面には、目の前にあるような穴が幾つも開いていた。この穴の中が、この市場にいる人たちの「住居」なのかしら……? 真理愛はそんなことを思いながら、ゲリラの後をついていった。
今度足を踏み入れた洞窟の中は、先ほどとは違い、かなり「舗装」されていた。コンクリで固めているわけではないが、地面はなだらかで、明かりも十分に灯されていた。先ほどの洞窟は、いかにも山中に開いた穴といった感じだったが、比べるとこの洞窟は、「廊下」と言ってもいいくらいだった。
「廊下」を少し歩くと、やがて右側が開けていて、そこは「部屋」になっていた。部屋にはテーブルと何脚かのイスが置かれ、テーブルの先にはホワイトボードも置いてあった。ホワイトボードにはペンや黒板消しのようなものも置いてあり、真理愛はそういった「現物」を見るのは初めてだった。今の時代、学校の授業も会社でのミーティングも、電子ボードで行うのが当たり前だったのだ。
ずいぶんアナログなものを使っているのね、と思いながら、真理愛がボードを見ていると。ゲリラが部屋にあるイスのひとつを指し、「そこに座っていてくれ」と促した。
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