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「……たぶん、ここに来る前に、俺の部下があなたの運転手を殴ったことを考えてるんですね。だから、今の俺の言葉は信じられないと。そうでしょう?」
そのものズバリの図星を突かれて、真理愛はそのまま「は、はい」と馬鹿正直に答えてしまった。そのあまりにまともな受け答えに、部屋の入口で立ったまま待機していた無精髭のゲリラが、「ぷっ」と吹き出した。真理愛は、何か自分が「天然ボケ」だと思われたようで恥ずかしく、顔が赤らんでしまった。
「いや、はははは。正直に答えてもらえて、嬉しいです。真理愛さんは、俺が思っていた通りの人のようだ」
本城もまた、決してバカにするような笑い方ではなく、屈託のない笑みを浮かべながらそう言った。その笑顔も見て、真理愛も少し「にこり」と微笑んだ。そして、自分がこうして「ゲリラの人質」という立ち場に晒されていながら、微笑むような気持ちになっていたことに驚いていた。
この、心境の変化は間違いなく、今目の前にいる本城という「青年」から発せられる雰囲気によるものだと、真理愛は感じていた。ゲリラのリーダーというから、もっとゴツイ、自分をここまで連れてきた四角い顔の無精髭ゲリラよりも強面の男を想像していたが。屈託なく笑う本城は、そんな想像とは全く逆のタイプに見えた。
「あなたが疑問に思っている点については、いずれ説明させてもらいます。それよりまず、あなたをここに連れてきた理由、俺はそれを話したい」
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