23人が本棚に入れています
本棚に追加
「で、でも。それなら、なんでわざわざ政府が、そんなことを……?」
真理愛は思わず、本城に問いただしてしまった。普通なら、ゲリラのリーダーたる人物に、安易にそんな口は利けないだろう。しかし、本城の醸し出す「柔らかさ」が、真理愛にその言葉を口走らせてしまっていた。入り口に立っている無精髭ゲリラは、この言葉を聞いて「ジロリ」と真理愛を睨んだが、本城自身は全く、気にする素振りも見せなかった。
「はい、それも当然の疑問だと思います。知っての通り、世界の食料事情を一手に担うSG社の強力なバックボーンを受けて、今の政府は、独裁状態にあると言っていい。真理愛さんもご存知かと思いますが、貧富の差は激しくなるばかりで、貧困層は日々、ギリギリの生活を強いられている。
そんな中で、貧困層の中から『反政府』を掲げる人々が立ち上がるのは、当然の成り行きと言えるでしょう。俺たちは、各地で立ち上がったそんな人々をまとめ。個々ではとても敵わないかもしれない政権に立ち向かうため、団結して立ち向かうための手助けをしようという目的で、この組織を作ったんです。
しかし、そんな俺たちの存在が、政権を維持する側にとって、やっかいな『邪魔者』なのは間違いない。逆に言えば、個人個人で対抗してくれば容易に退けることは出来ても、団体となればそうはやすやすとはいかない。だから政府は俺たちの取締を強化する一方で、俺たちがどれだけ『危険分子』かを意図的に広めてるんです。その手段のひとつが、今言った、食料庫などを襲撃し、それをゲリラの仕業だとメディアで拡散するというやり方なんです」
本城の話には、一応「筋が通っている」ように真理愛には思えた。しかしやはり、真理愛にはまだそれをそのまま受け入れる準備が出来ていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!