5/6
前へ
/875ページ
次へ
 もちろん真理愛自身にも、今の政権の独裁性、そして今の世界の仕組みが、何か「歪んでいる」ように感じてられていたのは事実だった。毎朝マンションの窓から見下ろす、「格差」がクッキリと浮き彫りにされえているかのような光景。あれが「当然のこと」などとは、真理愛には思えなかった。  しかし、本城の言った「政府がゲリラを弾圧するため、強奪事件を偽装している」などということは、やはりすぐに信じられるものではなかった。真理愛は、う~~ん……と考え込んでしまった。  確かに今の世の中は、どこかおかしいと思う。あたしは幸いにも、恵まれた生活を送れているのだけど。でも、このままでいいのかな、と思うこともある。そんな不安が、ここのところ見ている夢に出ているような気もする。何かこう、はっきりとは見えないけど、でも確かにそこにある。漠然とした不安、みたいなもの。  でも、だからって、政府の方針に反対する人を、そんな風に弾圧するだなんて。そんなこと、あるのかしら……? そう思いながら、真理愛は正面にいる本城の顔を「ちら」と見た。やや面長で、頬骨がくっきりとしていて、無精髭の人と同じく、少し日焼けしたように赤らんでいて。でも何か、目はとても澄んでいて、子供みたいに無邪気なような気もして……。  この人が、嘘を言うようには思えない。真理愛にはそう思えた。本城の醸し出す真摯な態度が、そう思わせてるのかもしれない。気がつくと真理愛は、自分が本城の顔をじっと見つめていることに気付いて、慌てて少し目を逸らせた。
/875ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加