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 時代はまさにバブルの絶頂。  至る所で万札が飛び交うような、昭和最後の狂乱期。  土地転がしが全国各地で横行し、特に東京の土地は高騰の極みに達し、一時は東京23区の土地の値段でアメリカ全土の土地が買えると言われる程だった。  この頃は、土地を手に入れ、それを転売するだけで利益が出た、夢のような時代だったのだ。  簡単に分かるように説明すると、土地転がしとは、つまり100万円で買った土地を110万円で売った場合、税金で5万円引かれたとしても利益が5万円残る。    これが単純な『土地転がし』の仕組みだ。  ようするに、将来的に値上がりが見込める土地を100万円で買い占め、値が吊り上った所で1000万円で売った場合、差額で莫大な利益も出るし、税金を引かれたとしても充分過ぎるくらいに合法的(・・・・・・)に儲ける事が出来るワケだ。  だから、この頃は、素人もヤクザも、狂ったように(こぞ)って土地を買い占めていた。    ◇ 「それ、止めといた方がいいぜ」  応接間で地図を広げながら、ここだあそこだと言い合っていた男達を横目に、ポツリと聖はそう言った。  仕立てのいいスーツ姿の男が、手を止めてチラリと聖を見遣る。 「ほ~お? 組長のペットが何か言ってんなぁ? 」  すると、周りの男達もクスクスと笑った。  一人を除き、全員、カタギのような恰好をしているが、中身は同じ下卑たヤクザだ。  ムッとしながらも、聖は静かに口を開いた。 「そんな辺鄙(へんぴ)な場所、いくら東京って言ったって売れるもんか。原価割れするのが、目に見えているじゃねーか」 「いいんだよ! 今はな、売りに出すだけで値が吊り上るんだ。それに、バイパスがこの上を通る計画が八割がた確実だって、情報が入ってんだ」
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