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だが、それと同時に、物心ついてからずっと聖を悩ませていた事象が、その身へ再び起きるようになっていた。
認めたくはないが――――どうやら自分は、かなり美しいらしい。
そして、同性にとって、欲望の対象になるようなのだ。
それは、聖にとって、全く喜ばしくない忌々しい事実だった。
故郷では、母親が家に連れ込んだ男達に、何度も乱暴されそうになった。
父親は都会へ出稼ぎに出たまま戻らず、母親はその鬱憤を晴らすように、幼い聖に当たった。
面白半分、母親と男たちに身体を弄られそうになったのも、何度もある。
持ち前の気の強さと喧嘩っ早さでその度に抵抗し、反撃し、傷だらけになりながらも、近所の家に助けを求めたりしてどうにか十の歳まで逃れられたが、成長と共に隠しようもなく美しくなる容姿に、男達がとうとう本気になり始め、さすがの聖も進退窮まり、自ら養護施設へ駈け込んで難を逃れた。
だが、駆け込んだ先の養護施設もまた、おおよそ安心できるような環境ではなく、聖は荒れに荒れた。
そして十二の時に、初めて人の優しさに触れる事になる。
今となっては、それが同情だったのか憐憫だったのか分からないが、孤独と寂しさに震える聖を抱き締めて『愛している』と言ってくれた女がいた。
中学の担任だった、畠山裕子という名の女教師だ。
そして、ただ、一度だけの逢瀬――……。
その後、その教師は妊娠したと風の便りに聞いたが、それも本当かどうか分からない。
女教師の家は、その辺りでは有名な名家だった。
――――教え子と通じたなど、犯罪行為だ。
もしも本当に妊娠したとしても、十中八九、その子は家族によって強制的に堕されている可能性が高い。
しかし、もしも……と、どうしても確かめたかったが、聖の方にも逃れられない受難が待ち構えていた。
なにせ、ウンザリするほどの田舎町だ。
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