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 当然、二人とも裸だ。  聖は、この半年、湯坊主のような日課を送っていた。  もちろん最初は、今までのウンザリするほど数多(あまた)の、嫌な経験や体験を思い出し、聖は断固としてその役目を拒否しようとした。  だが、正弘はそんな聖の警戒心を笑い飛ばし、こう言った。 「いいから、付き合いやがれってんだ。オレはガキをこます趣味はねーよ」  それが、本当に朗らかな物言いだったので、半信半疑だったが、聖は従った。  そして事実、この半年、正弘はそういった意味では一切聖に触れてこない。  今まで、大抵の男達はギラギラとした目で聖に襲い掛かって来たので、正弘とのそれは、初めての新鮮な体験だった。  父親の背中など、一度も洗った事も洗われた事もないが、もしかしたら親子というものは、こんな『感じ』なのかもしれない。 (親子、ねぇ……)  くすぐったい気がして、聖はどんな顔をしたらいいのか分からず、毎回戸惑う。 「――――オレ、何にもしてねぇけど、このままここにいていいのか? 」 「ん? 」 「みんな、オレの事をあんたのペットだって言ってバカにしている。……そりゃあ、そうだよな。オレのやってる仕事なんてのは、毎日あんたの風呂に付き合うだけだ」  聖は溜め息をつき、桶の湯をまた、その背中へ掛ける。 「湯坊主やって、三食昼寝付きなんてさ、そんなの本当にタダのペットじゃねーか」  しかも気に入らないのは、周りの連中が、聖の事を正弘の色子だと信じ込んでいる事だ。  何度も違うと否定しているのに、誰も耳を貸そうとしない。  あわよくば自分とも、と、強引に何度も誘われて、いい加減にウンザリしている。  誓って言うが、聖は今まで一度たりとも、色を売った事などないのに。 「――――あんたもさ、手下たちに、子供趣味の色ボケ親分なんて陰口叩かれてるかもしれないぜ? 悔しくないのかよ? 」 「ほ~お? 色ボケ親分ねぇ? そいつぁ愉快なこった」  ホッホッと笑い、正弘は聖の頭に手を回した。 「ほら、頭ぁ洗ってやるからこっち向きな」 「……」
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