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 いつ何時、何が起こるかわかりゃあしねぇ。  行く当てもなく、ただ東京に向かえば何とかなると思って、着の身着のまま上京した。  東京に行けば何とかなるなんて、我ながら安易な発想さ。  所詮は、田舎者の考えだ。  西暦1988年、昭和の最後となる63年、まだ十五歳だったオレは、ただ一人、上野駅のホームへ降り立った。  東北新幹線はまだ東京駅までは乗り入れしておらず、東京駅には、ここから山手線とやらに乗り換えていかねばならないらしい。 (面倒くせぇな……)  小さく舌打ちして、オレはカバンを背中へ背負った。  もう二度と故郷を思い出すことも、そこへ戻る事もないだろう。  何もかも捨てて、ココへ来たのだ。  世の中は、やれ消費税導入反対だのODA世界一だのと浮かれたり悲観したり、様々だ。  バブル経済真っ只中、狂乱の時代、最後の年となる、昭和。  オレ一人の感傷など、どこの誰にも関係ない。  何をするにも他人の目がついて回った田舎とは、天と地だ。  ここでは、オレが野垂れ死にしても、きっと、新聞の三面記事に小さく乗るかどうか位の騒ぎだろう。  大都会東京、ここはそんな虚無の風を感じる。  だが、それこそ願ったり叶ったりだ。  自由になりたくて、ココへ来た。  やりたいようにやって、それで死ぬのなら本望だ。 「まずは、カネを作らないとな」  そう呟き、オレは荒んだ笑みを浮かべた。 ――――その少年の名は、御堂(みどう)(ひじり)。  のちに、ジュピタープロダクションという芸能事務所を、日本でトップクラスの芸能事
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