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「う……」
全身を駆け抜けるような鋭い痛みと、ひどい鈍痛の両方に苦鳴をあげ、聖はゆっくりと覚醒した。
ボンヤリとしていた視界が、段々にハッキリとする。
(ここは――どこだ? )
まず、己の状態を確認する。
骨折などのひどいケガはしていないようだが、全身打撲の痣だらけで、あちこち腫れて熱をもっているようだ。
そして、ヤクザとトラブルを起こす以前から、体中に負っていた大小の傷には、清潔な包帯が巻かれている。
頭にも丁寧に包帯が巻かれていて、蹴られて出血した箇所は入念に手当てされているようだ。
――――しかし、なぜ自分は裸なのか?
どうやら、意識のない状態のあいだに、全裸にされ、身体を清拭され、ケガをした箇所を手当てされたらしい。さすがに、一週間以上風呂に入っていない薄汚い体のままでは、傷口からの雑菌感染の方が憂慮されたのだろう。
だが、勝手に体をいじられた事には間違いなく、不快感しか感じない。
(病院……か? )
静かに半身を起こして、周りを見渡す。
しかし、ここは病院などではなく、宮大工が手掛けたような豪奢な和室だった。
螺鈿細工の欄間など、普通の一般家庭にあるわけがない。
とんでもない金持ちの家か、曰くつきの家か――――多分、後者だろう。
青い畳の香りに眉を顰めながら、聖はそろそろと、敷いたあった布団から起き上がる。
(早く、とんずらしねぇとヤバイな)
だが、裸のままでは具合が悪い。
とりあえず布団からシーツを剥ぎ取り、それを体へ巻き付ける。
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