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(オレの服は、どこだ? それに、ここは――? )
聖は辺りを警戒しながら、室内の物色を開始した。
服もそうだが、生きて行くには、カネは何がなんでも必要だ。
これだけ立派な屋敷なら、何かしら金目のものはあるだろう。
ゴソゴソと、和箪笥の引き出しを探っていたところ、廊下の方から足音が聞こえてきた。
(マズイ! )
聖は慌てて、廊下側とは反対側の障子を開ける。
だが、カラリと開けた先には、強面の男が仁王立ちに立ちはだかっていた。
どうやら、最初から聖は監視されていたらしい。
「くそっ! 」
悪態をつき、聖は背後を振り返る。
するとそこには、五十前後の壮年の男がクスクスと笑って立っていた。
両隣には、かなり屈強そうな男達が付き従っている。
どうみても、玄人だ。
自分一人の力では、この場面を突破する事はムリなことだと悟り、聖は地団駄を踏む思いでキッと男を睨む。
屈強そうな男たちの中で、クスクス笑う男はむしろ貧弱そうに見えるが、確実にこの男こそがこの場のトップなのだと強烈に感じる。
意識を失う前に、この男の腕に捕らえられた事を思い出し、なお一層、聖は警戒心をあらわに男を睨みつけた。
「――――言っておくが、最初に絡んできたのはそっちの方だぜ」
「ふん? 」
「オレはただ、許可をもらった商店の前で一畳程のゴザを広げて、銀細工の小物を売っていただけだ。それを、ショ場代を払えだ何だと、言いがかりをつけやがったのはそっちだ。おかげで、せっかく仕入れた銀細工もどっかに行っちまったよ。どうしてくれんだ? 」
素っ裸にシーツだけを巻き付けた格好で、だが、聖はそう啖呵を切ってみせた。
ここで、泣いて震えているだけのガキだったら、さぞかし可愛げもあるんだがと、正弘は苦笑する。
しかし、この少年がそういうしおらしいタイプの少年であったなら、正弘はそもそも最初から、興味を引かれなかった事だろう。
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