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「話を聞く限りでは問題は無さそうだ。そして大企業のトーラムマインドならいざという時の金銭的援助も心配ないだろう」
「それはそうだが!」
「このまま彼を乗せて万が一の事が起きた場合、それがトラウマとなってラフトボールを忌み嫌うようになったのなら、俺はそっちの方が嫌だ」
枦夢が目を細め、じっと力強く青年を睨めつけた。
説得は無駄と悟って観念したのか、眼鏡の青年は振り返って宇佐美を睨みつける。口にしなくてもわかる、「乗るな」と言いたいのだ。
チームメイトの大事だ、心配になるのはわかる。
あえて何も言わないのは彼なりの配慮だろう。
対して九重義晴は期待の眼差しで見つめている。こちらは「乗ってほしい」と思っているのだ。
そして枦夢は、どちらでもない。ただ宇佐美の決断を待っている。
「僕は……」
ふと、ハミルトンを見上げる。
義晴の言う通りなら、ACシステムを使えばラガーマシンを自分の身体にすることができる。そうすれば、走る事ができる。
それは、夢のようだと思った。
「僕は、乗りたい……です」
眼鏡の青年があからさまな落胆の溜息を吐いた。
宇佐美はその事に気付く事はなく、声を荒げ、肺の空気を全て押し出すように一気にまくしあげる。
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