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しかし妙なものである。今自分はハミルトンになっている、違う人間になったような感覚……とかそういうものではない、全くの新しい存在に生まれ変わっているのである。
一番驚いたのは感覚がある事だ、今全身が縛られているが、その縛られている部分に圧を感じている。
地面に接地している両足には自重を支えている感覚がある。
そう、両足にだ。
「上原君、聞こえるかな?」
耳に義晴の声が入ってきた。
「はい、聞こえます」
「今からハミルトンをハンガーから外すから」
と、言い終わるや否や、全身を縛っていた拘束具が次々と外れていきハミルトン……もとい宇佐美は自由となる。
ダイレクトに足への負担が大きくなり、後ろへ蹌踉めく。咄嗟に右手でハンガーを掴み、右足を後ろに下げて何とかバランスをとって転倒を防ぐ。
「今、右足が……動いた」
最初は信じられなかった。
試しに右足を前に出してみる。スムーズな、かつて普通に歩いていたように滑らかな動きで膝が動き、踵から接地した。
そして、前に体重を掛けてみる。
バランスが崩れない、自立しているのだ。
「動いた、足が!」
1歩踏み出す。もう1歩、もう1歩、次第にその間隔は短くなってフィールドを歩きだす。
「歩いてる……ハハ、凄い! 歩いてる!」
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