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自分の足で歩いているわけでないことはわかっている。それでも足が動いて、重さを感じて、腕を振って、それら全てを自分の感覚として感じられる。
ただの錯覚にすぎないのだとしても、宇佐美にとってハミルトンとの一体化は麻薬のような中毒性があった。
「慣れてきたか?」
ふと気付いたら、隣を枦夢のラガーマシンが歩いていた。
真っ赤なハミルトンとは違い、枦夢のラガーマシンは黒地に金のラインが入ったカラーで、ハミルトンより2回り大きい。
「はい」
「ならこのまま歩きながらキャッチをしてみるか」
枦夢は手に持っていた楕円形のボールを、放物線を描くように投げる。
それを両手で抱き込むようにキャッチする。
「いいキャッチだ、だが今のように体で受け止めると次の動作が遅れる事になる。次からはボールの中心を狙って手で掴んでみろ」
「は、はい」
再び放物線を描いて投げられるボール、宇佐美は機械の手で待ち構え、よく狙って両手で包み込むようにボールを掴む。
「今のはいいぞ、次はもう少し早くするか」
こうして、しばらくは歩きながらパス練習を行った。
地味なものだが、宇佐美にとっては久しぶりに身体を動かしてスポーツができたので、とても喜ばしいものだった。
「次は走るか」
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