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いよいよだ。なんやかんや走る事を忘れてパス練習をしていたが、本来宇佐美は走りたくてハミルトンに乗ったのだ。
その本懐が今遂げられる。
歩く速度を上げていく、程なくハミルトンは走り出す。
初速を超えて時速36km、車と同等の速度でフィールドを掛ける。
右足に違和感は……少しあるけど問題ない(この違和感は久しく右足を使っていなかった事から生じるもの)。
「走ってる……ほんとに、ほんとに走ってる!!」
一体いつぶりだろうか、中学1年生の頃に右足不随となったからおよそ4年、たった4年だ。しかし宇佐美にとっては悠久に等しいたった4年である。
呼吸を一定のリズムに整えながら走る。この肺が押し潰されそうな感覚も久しぶりだ。
因みに呼吸はカプセル内の宇佐美本体が行っている。
「走るのも問題なさそうだな……ほら」
枦夢の機体が隣を並走し、パスを投げる。先程の弓なりパスではなく、ジャイロ回転がかかった弾丸のような速いパス。
宇佐美はそれを練習した通りに掌で包むように受け止める。
「あそこにある音叉のようなものが見えるか?」
枦夢の機体が指差したのはフィールドの端っこ、ゴールポストがあるところだ。
音叉のような二又に分かれたポストにキックでボールを入れると得点が入る仕組みになっている。
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