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走る、程なく初速を超えて最高速度に達する。
(速い)
宇佐美の心臓が早鐘を打つ、緊張と期待でいっぱいになった心は枦夢の一挙手一投足に目が奪われていた。
残り40mになったところで異変が起きた。
枦夢の機体の背中が揺らぎ出したのだ、それは加速装置であり、認識する頃には豪快な炎を噴き出して加速していた。
横から客観的に見ているとその加速はいきなり速くなった程度に思えるかもしれない。
しかし正面から迎え撃つ宇佐美には、一瞬で間合いを詰めたような、瞬間移動をしたように感じられたのだ。
それだけではない、腕を伸ばせば触れられる距離にまで迫った時、不意に、そう不意にだ。
枦夢の機体が煙のように消えたのだ。
そして気付いた時には後ろでタッチダウンをきめていた。
「今のが実際のエンドライン前の攻防の一端だ」
「なんか、今消えたような」
「実際抜かれるとそう感じるものだ」
「ほへぇ」
「今のは簡単なステップ……ああ……所謂フェイントを使った。次はお前が抜いてみろ」
「え? えぇ……うーん、やってみます」
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