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同じ様に走る。そして同じくぶつかるかどうかの瀬戸際で宇佐美は上体を右に揺らしてから左を抜く、枦夢は右手を伸ばして捕まえようとするが、宇佐美は事前にやや後ろへと跳んでいたためそれを回避することができた。
つまりそれすらもフェイントであったのだ。
フェイントにフェイントを重ねて、そのまま右から抜きさろうとする。
(やった!)
抜いた、と思った。しかし……そこは流石プロ、宇佐美の気付かぬうちに枦夢の左手はハミルトンの腹に伸びており、あっけなく止められてしまった。
「あぁ、今のはいけると思ったんだけどな」
「悪くない、俺も少し焦ったぐらいだ」
「プロの人にそう言って貰えると誇らしいです」
それはお世辞だろう。実際枦夢は直ぐに対応してきた、素人の浅知恵ではやはり足元にも及ばない。しかも相手はスプリングランドと呼ばれる全国大会で優勝したチームのランニングバックだ。
つまり日本最強のランニングバック。彼からしたら宇佐美の行動は児戯のようなものだろう。
それでも、宇佐美は挑戦する事をやめない、むしろ火がついて楽しくなってきた。
「あの! もう一度いいですか? やってみたい事があるんです」
「ああ」
5回目の挑戦が始まる。
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枦夢は内心で冷や汗を感じていた。
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