40人が本棚に入れています
本棚に追加
あとは走り抜けるだけ、ブースターは使えない(大会規定で連続使用は10秒まで、その後は10秒のスパンをおかなくてはいけないとされている)のでそのまま走るしかない。
勝った、と思った。事実、普通の相手ならこれでフィニッシュだったかもしれない。しかし今回の相手は日本最強のランニングバックだ。
当然一筋縄ではいかない。
宇佐美の隣を黒い影が横切った。
「うそっ!?」
気づいた時には遅い。目の前、エンドライン手前に黒い獣が横から滑り込むように立ちはだかっていた。
犬のような長い頭に長い胴体、ギアとサスペンションが見え隠れする四本の足は力強く地面を踏みしめてこちらを向いている。
驚いたのも束の間、その機械の犬は突然可変を始めた。胴体は半分のところで反転し、前足を繋ぐ関節は横に広がって、長い頭は細かい可変を繰り返しながらヘッドギアのような丸い形へと変貌する。
全ての可変が完了して現れたのは、黒いラガーマシン、枦夢の機体であった。
枦夢はそのまま待ち構える事はせず、突進、ハミルトンの下腹部へ頭を突き刺すように、槍に近いタックルを仕掛けてそのまま地面に押し倒した。
「はぁ……はぁ、まいりました」
青空を正面に見つめながら何とかその言葉を口にする。
「大人気なかったな、すまない」
「いえいえ、少しでも本気を出して貰えて嬉しいです」
最初のコメントを投稿しよう!