40人が本棚に入れています
本棚に追加
EP1 Side Story
試乗会の前日。
展覧会の事務所に、バイクのような人型ロボットを引き連れた九重祭がやってきた。
「来たわよーお祖父ちゃん、フィールドの手続きってこれでいいのかしら?」
ポンディングステンカラーコートとプリーツスカートというカジュアルファッションの彼女は、鞄から書類の入った茶封筒を取り出して、「会長席」と書かれた名札が置いてある机に置く。
会長席に座る初老の男性こと、九重義晴は頭を上げる。
「おお、祭か。フィールドの契約書は後で確認しておくぞ……はぁ」
「あら、溜息吐いちゃって……展覧会のスピーチでもとちったの?」
「ふむ、実はの……」
かくかくしかじか。
「なるほど、ハミルトンのテストパイロットが病欠なのね」
「この後の試乗会で明後日のお披露目で使う動画を撮る予定だったんじゃが、どうしようかのぅ」
「いやもっと早く準備しなさいよ、何でこんな土壇場までサボってんのよ」
「身体障害者の操縦データが欲しかったんじゃが、中々テストパイロットを引き受けてくれるのがおらんくての」
ひょっとしたらそのテストパイロットも、ほんとは病欠ではなくて土壇場で逃げたのかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!