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「じゃあそこのクイゾウの足を一本切り取って乗せたらいいじゃない」
「いやひどいっすよ!! 外道っすかお嬢!!」
「はあ、都合良く身体障害者が展示会にきてテストパイロット引き受けてくれんかのぅ」
「右足不随の少年ならさっき展覧会に行く所を見たっすよ」
「なんじゃと!? こうしてはおれん! 探しに行かねば!」
義晴は勢いよく事務所を飛び出して、展示会の会場へと姿を消してしまった。
なんともアクティブな老人である。
残された祭とクイゾウは机の上に置いた茶封筒へと目を落とした。
「どうするっすか? 会長の判子がないと次の部署へ書類回せないっすよ」
「待つしかないわよ」
祭は近くのパイプ椅子を引き寄せて、アクティブ老人の帰りを待つことにした。
この時のやり取りが、後の運命を決定する分岐点だった事に、彼女達は気付く由もない。
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試乗会が終わってから数時間後。
熊谷市へ帰宅途中のバス内にて、カールが隣に座る上那枦夢へ聞こえるように呟いた。
「中々興味深い体験だったな」
「ああ」
「枦夢が変形まで使うとは思わなかったぞ」
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