EP2 Obtaining License ①

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 宇佐美はインターフォンを押すかどうか悩んだ、曲がりなりにも九重祭は大企業のお嬢様なのだ、そんな彼女がこんな庶民の家に住むだろうか。実は同じ名字なだけの赤の他人ではないだろうか。そんな考えが頭をよぎる。    家自体は平凡な日本家屋、1階建てで70坪程の広さと小さな庭がある。  少しお金がある人の家っていうレベルだ。    おずおずとインターフォンを押すと、聞き馴染みのあるピンポーンという音が耳に入ってくるので、どうやら中に人はいるらしい。    程なくクイゾウの声が発せられる。   「はいはーい、宇佐美っすかー?」   「そ、そうです」   「ういっすういっす、玄関は空いてるから勝手に入ってくるっす」    それだけ言うとガチャっと通話を切った。  門扉を開けて玄関へ進む。右手には駐車場が、左手には小さな庭が見えた。庭の手入れは行き届いているようで伸び伸びの雑草等は見当たらず、日当たりの良さげな場所にプランターが置かれている。まだ芽は出ていない。    ガラガラと乾いた音をたてながら木製の引き戸を開けると、取り次ぎにクイゾウが立っていた。   「ういっす。手伝うすか?」   「移動だけお願いしていいかな」   「ういっす」    上がり(かまち)に腰を掛けて、沓脱ぎ石の上に足を置いて靴を脱ぐ。取り次ぎに上がってクイゾウの肩を杖代わりにして歩を進める。       
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