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「それは勿論あんたの分に決まってるじゃない」
「……えっ?」
しばしの沈黙、そして程なくして隣りの部屋から物音が聞こえた。慌ただしく床を叩くような音だ。
「逃がすかっ!!」
続いて祭が大きな足音をたてて隣りの部屋へと駆け込む。
もれなく隣から言い争う声が聞こえてくる。
「ええい! 大人しくお縄につきなさい!」
「うぇぇん、酷いよ祭ちゃぁぁん」
一人は祭、もう一人は知らない女の子の声。
そして、祭が一人の女の子の襟首を引き摺って戻ってきた。
スウェットに身を包んだ儚い印象の女の子、ボブカットの髪は手入れしてないのか所々毛が跳ねていた。
「はい挨拶ー」
祭が女の子を無理矢理立たせて前に押し出す。顔を真っ赤に染めた彼女はおずおずと言葉を紡ぎ出す。
「ひうっ、ああああの……その、な、七倉 奏……と言います……???っっ」
と自己紹介だけしたら奏は祭の後ろへと隠れてしまった。
どうも極度の人見知りらしい。
「あの、九重さん……その娘は?」
「そいつの中身よ」
と言って祭が指差したのはさっきから沈黙を続けているクイゾウである。
つまりそいつとはクイゾウであり、クイゾウの中身と言うことは。
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