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健二が見つめるのはスマホのメッセージアプリの画面、そこに宇佐美という友人から「色々あってラフトボールを始めることにしました」、という簡潔な文章が送られてきていた。
「こらもう早速聞きに行くしかないで」
京都出身の武尊が使う関西弁は、少し京都弁訛りが入っていて大阪弁よりややマイルドになっている。
そしてこの男は大のラフトボール好きで、隙あらばラフトボール好きの道へと引きずり込もうとしている。
「そういえば、こないだ宇佐美に展覧会のチケット渡してなかったっけか?」
「おう、渡したで」
「それがきっかけじゃね?」
「そっかぁ?、ワイの布教活動もついに実をなしたか。早速聞きに行こーや」
「せやな」
口調が写った。
コンビニで買った昼食用のパンを手に席を立つ。
そのまま教室を出ようと思った矢先、聞きたくない声に呼び止められてしまう。
「おや? またあの『障害者』の元へ行くんですか?」
「あぁ?」
振り返り、声の主を睨みつける。
そこにいるのは南條 漣理という名の男子生徒、身長は健二より一回り大きく185cmはある。長身なうえ整った顔立ちと甘いマスクなため女子の人気は高く、また何処ぞの企業の御曹司という。
金もルックスも備えた女の理想、男の憎むべき天敵である。
「南條……ちっ」
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