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教習所の教官は教え方は上手いがそれなりに厳しく、うつらうつらと船を漕いでいた健二を容赦なく晒しものにした。
「くっ……わかりません」
羞恥に耐えながら健二はそれだけ呟いた。
それを漣理は隣で嘲笑う。
「やはり下等市民、頭の中まで下等とは思いませんでしたよ」
「ほう、それなら答えてみろ南條」
「えっ! それは……」
「おいおいエセ貴族も頭の中は下等なのかよ」
「今答えようとしたのにあなたが余計な事を言うから忘れてしまったんですよ」
「八つ当たりかよ」
「静かにしろお前ら! これ以上騒ぐなら追い出すぞ」
教官の一喝で2人の喧嘩は一旦ストップする。
誰もがホッと胸を撫で下ろしている。宇佐美もひとまず落ち着いた事に安堵しながら健二を見つめると、ボソッと「好きで来てんじゃねえんだよ」という健二の呟きが聞こえてきた。
気のせいという事にしてその時宇佐美は聞き流す事にした。
「そうだな、替わりに九重、答えてみろ」
「私に飛び火しちゃったわ……宇佐美君お願い」
小さな声で宇佐美に助けを求める。そもそも教官は正解を求めてはいない、自分で考えて結論をだしてほしいだけなのだ。つまり正否はどうでもいい。
しかしそのような事を説明する時間はないので、宇佐美は小さな声で「姿勢かな」と伝える。
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