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「美由紀さん、いや麻美さん美友さんに聞いて欲しいのですが、このことを話すべきかずっと葛藤していることがあります」
注文してあったソフトドリンクを初めて口にする真人。氷が解けて味が薄くなっていた。
「何でしょうか」
マーメイは改まった真人の様子に声を潜めた。
「実は僕に公安が接触して来ています・・・」
「え?」
ピクッとするマーメイ。
「出来ることなら彼らから逃れてもらいたい!」
「・・・・・・」
「あなた方のこと色々と掴んでいる様子です。僕は国家間の利益、不利益などどうでもいい。北朝鮮であろうがCIAであろうが関係ない。あなたたち二人に人間として普通に暮らしてもらいたい。組織へ逃げるのではなく、誰も知らない土地かどこかへ組織から脱出できないものだろうか?」
「・・・!」
真人の真剣な言葉にしばらく声が出ないマーメイ。俯いて真人と同じように初めて飲み物に手を付ける。それからしばらく考え込むと口を開いた。
「ありがとうございます、長谷川さん。私たちのせいで家庭が大変な状態なのに、そんな気まで遣っていただいて・・・」
「・・・・・・」
次の言葉を待つ真人。
「公安が動いていることは知っています。ただどこまで踏み込んだのかは組織の方で調べています。公安にもこっち側の人間がいますんで・・・。国も人間も馬鹿し合いですよ。結局信じられるのは自分だけ。今の長谷川さんの言葉だって私たちを陥れるための罠かもって瞬時に計算しました」
「え・・・」
「だけど直ぐに真実の言葉と分かりましたよ。本当にありがとうございます。妹があなたに夢中になる理由が分かった気がします」
マーメイは優しい目で真人に微笑みかけた。
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