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「私たち姉妹は、同じ人を好きになってしまうんです。そのせいで今も続く確執が私たちにはあって、それが時々妹の暴走を生んでしまっています。こんな風に普通の生活の中で長谷川さんと接していたら、私もどうなるかな、なんて思います。だけどそれは無いとここで断言しておきますね。友里さんは唯一私が心を許したお友達なんです。奈々ちゃんのことも大好きだし、あなた方家族のお陰で私は少し普通の生活というものに触れることができました。そのことで長谷川さんには感謝の気持ちで一杯なんです。本当にありがとうございます」
「・・・・・・」
「でも美友にはそれすらが無い人生だったんです。そんな部分でも彼女は私に対して憤りがあるんです。かわいそうな子なんです。だけどこればかりは私の力ではどうしてやることも出来ない。組織の指示で動き、止まる。私たちは組織に背いて生きることは出来ません。そんな選択肢もありません。逃げるなんて考えただけで消される存在なんです」
「でも、あなたほど賢ければ・・・何とか」
それでも方法はあると真人は思いたかった。
「ありがとうございます。お気持ちだけは受け取りました。それより長谷川さんは友里さんとの仲を取り持つことだけを考えてください。あんな写真を見せられた友里さんの気持ちを思ってやって下さい。言い訳も何もしてみようが無いと思います。私たちの正体を話したところで今の友里さんには通用しないと思います」
「ああ・・・」
その事実が重く圧し掛かる。
「だけど友里さんには長谷川さんが一番の理解者。時間をかけて誠意を持って接してやって下さい。きっと分かってもらえます。友里さんには長谷川さんしかいないんですよ。もう私は影ながら応援することしか出来なくて無責任ですけど、友里さんが要求するなら何にでも応じます」
冷静沈着な麻美は本当に美友とは対照的だと思った。
「公安は近いうちに大きく動くと思います。その前に色々と対処しておいて下さい。彼らに捕まらないように気を付けて下さい。僕にはそれしか言えません」
「ありがとうございます」
しばし沈黙の時が流れる。
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