1・決戦(前編)

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1・決戦(前編)

 メイヨウはお迎えの時間より45分ほど早くに幼稚園に着いた。正門は防犯上閉ざされていて呼び出しチャイムがある。ボタンを押した。 「すいませーん」 『ハイ』 「長谷川奈々の母親の代理でお迎えに上がった剣持美由紀と申します」 『はい? 長谷川さんから連絡は受けておりませんが』 「急用でお母さんの友里さんから頼まれたんですけど・・・」 『ご本人からの連絡をお受けしないとお子様を代理の方にはお渡し出来ない決まりなんですけどぉ』 「えっ、そうですか・・・。じゃあ奈々ちゃんに直接言って私を見てもらえば間違いないんですけど・・・」 『ちょっとお待ち下さい』  門扉の前で腕を組んで脚をゆするメイヨウ。三月初旬にもなると日中はだいぶ寒さも和らいできたのを肌で感じていた。 「みゆきちゃ~ん!」  入口ドアのところで奈々が手を振った。 「奈々ちゃ~ん。今日ママが来れないんだってぇ」  と奈々に声を掛けると、先生も安心して奈々を送り出した。 「みゆきちゃんとかえれるの~?」 「そうだよ~! 美由紀ちゃんちに行こう」 「やったぁ!」  とニコニコして奈々が走って来た。  待たせておいたタクシーに奈々を乗せると、タクシーは走り出した。 「奈々ちゃん、何を飲む?」 「ナナはカルピス」 「はーいカルピスね」  マンション1階のコンビニエンスストアで買い物をする二人。たまにマーメイの代わりに部屋に入る仕事があるメイヨウは入口の暗証番号は知っているし、鍵も持っていた。
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