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友里はいつも通り奈々のお迎えに幼稚園にやって来た。園児と手を繋いで帰って来る母親たちに会釈しながら正門をくぐった。
「お世話様です、長谷川です」
お出迎えに出ていた保育士の一人に挨拶をすると、
「あれ? 奈々ちゃんはもう帰りましたよ」
と目を丸くして言う保育士。
「え?」
一瞬にして真人の顔が浮かぶ友里。
「主人が?」
「いえ、女性です。保育参観にも来ていた奈々ちゃんも知っている人だったんで。長谷川さんに頼まれたということだったんで・・・」
血の気が引く友里。
(美由紀さんだ!)
「あ、そうですか・・・。戻って確認しますね」
「スミマセン! 園長を呼びます!」
「いえいえ大丈夫ですよ。私が勘違いしていたかもです」
と作り笑いをする友里。これで騒ぎになって真人と別居していることが公になることは避けたかった。
友里は急いで駐車場まで走りながら美由紀に電話を掛けた。
「・・・もしもし・・・」
局長室のマーメイに掛かってきた電話の表示は「長谷川友里」だった。
『奈々は? あなたでしょ? 奈々をどこに連れて行ったの?!』
「え?」
『とぼけないでよ! あなたそれ誘拐よ!』
「ちょっと友里さん」
『もし奈々に何かあったら私があなたを殺します!』
「友里さん、どうしたの?」
取り付く島の無い友里の様子にメイヨウの顔が浮かぶマーメイ。
「友里さん、」と言い掛けたところで電話が切れた。
呆然とするマーメイ。
「どうしたマーメイ。何事だ?」
ユウ局長は怪訝な顔をしてマーメイの様子を伺う。
「いえ、ご近所トラブルです・・・」
直ぐに平静を装った。
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