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マンションではメイヨウと奈々がカーペットの上で遊んでいた。
「お馬さんやろう、奈々ちゃん」
「おうまさん?」
「お姉ちゃんの背中に乗って」
四つん這いになるメイヨウの上に乗る奈々。
「お姉ちゃんがお馬さん。奈々ちゃんは行きたいところを言って」
「アハハハッ! じゃあタタミのおへやっ」
「ヒヒ~ンッ」
と言って進み出すメイヨウ。
「アハハッ、アハハッ」
喜ぶ奈々が、
「おねえちゃん、みゆきちゃんじゃない」
と唐突に言った。
「え? どうして?」
「わかんなーい」
と言って笑う奈々。
(子供には分かるのね・・・)
と思ったとき電話が鳴った。
(来たわね)
メイヨウは真人からの電話だと思ったら、鳴っているのは佐々木の電話でなくメイヨウ個人の電話だった。
「奈々ちゃん、ちょっと電話出るね」
と奈々を降ろすと、ショルダーバッグから電話を取り出す。
(マーメイ・・・)
「もしもし」
『メイヨウ、今どこなの? 奈々ちゃんがいるの?』
「さすが通信工作員。情報が早いわね」
『いい加減にしなさいメイヨウ。どこ? どこにいるの?』
「あなたのマンションよ。一緒に遊んでいるの」
肩で大きくため息をするマーメイは、渋谷駅のタクシー乗り場に小走りで向かっていた。
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