1・決戦(前編)

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 斎藤たちが屋上に顔を出したその時、 〝パンッパンッ!〟  2発の銃声と共に公安警察の男が後ろにふっ飛んだ。 「あっ!」瞬時に前に飛んで伏せる斎藤。  男は額と胸を打ち抜かれていた。 「うあっ!」しゃがみ込む調査官の男に、 「伏せろ藤田!」と叫ぶ斎藤。 「銃を抜け! 彼は銃を持っている、それを寄こせ!」  斎藤は公安警察の男を指した。  ほふくで死体に近づく藤田。スーツの上着をめくるとホルダーに入れられた拳銃が見えた。あわててそれを抜くと斎藤の方へ投げて転がした。  その藤田はメイヨウから丸見えだった。 〝パンッ!〟  という音と同時に藤田の頭部から血が飛び出した。 「くっ!」  斎藤は拳銃を手にするとペントハウスの裏手にほふくで進む。 (スゲェ腕前だ。どうにも出来ない!)  ペントハウスの裏手まで辿り着いた斎藤。 「おい、やめろ! 子供はどこだ!」と叫ぶが返事は無い。  全く動くことが出来ない。 「ここの通信室は日本は関係ない! 公にもならない! 我々は感知しないからもう止めろ!」 (よし・・・)  メイヨウは相手が公安だと確認した。 (これから来るのね)  弾数が気になるメイヨウ。 (ユウ局長は何人寄こすのかしら)  その時、 「奈々~!」と真人の声が聞こえた。  続けて「奈々~! ママよ~!」友里の声も。  と同時に「キャーッ!!」と死体を見た友里の悲鳴が聞こえた。 (真人さん!)  メイヨウがピクッとする。 「長谷川さん伏せろ!」  ペントハウスの方から斎藤の声が聞こえた。 「斎藤さん! 無事か~!」 「何よ?! 何なのよ!」混乱して絶叫する友里。 「友里は入口に戻れ!」腰を低くして友里に叫ぶ真人。  日が落ちて薄暗くなってきた中、「ママ~! ママ~!」と奈々の声が聞こえた。 「奈々~!!」友里が半狂乱になって叫ぶ。 「どこよ! 奈々はどこなのよ~!」  真人にしがみ付く。 「ダメだ友里、下がれ!」  真人は周囲を警戒しながら友里を後ろに引いた。
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