838人が本棚に入れています
本棚に追加
機械室では奈々が友里のもとへ行こうと出てきた。
「奈々ちゃん危ない!」慌てて奈々を押さえるメイヨウ。
奈々を前に抱えたままゆっくりと進み出す。そして、
「公安の人! 斎藤さん! 撃たないで! 子供がいるわよ!」
と外に出てきた。
目を見開く斎藤。暗くなってよく見えない。
メイヨウは奈々を友里のもとに返すつもりだった。斎藤の位置は確認している。すでに頭の中では照準を当てていた。
ゆっくりとペントハウスの階段を降りるメイヨウ。
「斎藤さん! 子供は返すから撃っちゃだめよ! 真人さんたちもいるんだからね!」
とメイヨウは天に向かって叫ぶ。斎藤が焦って乱射するのを恐れていた。
「ママ~! ママ~!」
尋常でない空気に恐くなって泣き出す奈々。
「美由紀さん・・・何なの? 何しているの?・・・」
友里の震えが止まらない。突然の理解ができない展開にパニックになりそうだった。
「美友・・・ゆっくり来てくれ、奈々をこっちに・・・」
努めて冷静にメイヨウに声を掛ける真人。
メイヨウは斎藤がいる辺りに銃を構えながら横目に真人たちの方へ進む。
「真人さん、私は大丈夫・・・。向こうがパニくったらヤバイの・・・」
ゆっくりと真人に近づく。
「ママ~ママ~!」泣き喚く奈々。
「大丈夫よ、奈々ちゃん・・・パパに渡すね・・・」
斎藤がメイヨウの射程範囲に見えた。斎藤からも見えているはずだ。
あと2mで真人に奈々を渡せる。
声を殺して顔をくしゃくしゃにしながら見守る友里。
「よし、ゆっくり奈々をこっちへ・・・」
あと1m。
「奈々ちゃん・・・パパのところへ行って・・・」
と小声で奈々を離したその瞬間、
〝パンッ!〟〝パンッ!〟
とほぼ同時に二方向から銃声がした。
最初のコメントを投稿しよう!