830人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
「メイヨウ! しっかり意識を持って! 私を見て!」
この血の量では助からないことを悟ったマーメイ。
「病院に連れて行くぞ!」
真人は首に巻いていたマフラーを傷口に押さえ込む。
「無理よ長谷川さん、私たちはもう・・・」
何かを言いかけたマーメイに、
「そんな状況じゃないだろ!」
と真人が怒鳴る。
「それよりメイヨウのそばにいてやって。ずっと抱いてやって・・・」
マーメイの瞳から零れ落ちる涙を見て言葉を失う真人。
「美友・・・」
優しくメイヨウを抱き締める。
「お姉ちゃん・・・今までごめんなさい。いつも・・・守ってくれてありがとう・・・本当は私、お姉ちゃんが大好きだったんだよ・・・」
力なくマーメイに微笑みかけるメイヨウ。
「知ってるよ・・・うん、ずっと知っていたよ」
メイヨウの髪を撫でて微笑み返すマーメイ。
「真人さん、いてもらえて嬉しい。ありがとう・・・黙ってたけど・・・」
「うん・・・何だい・・・?」
真人はメイヨウに顔を近づける。
「私のお腹に・・・赤ちゃんがいるの・・・」
「ええ?!」
驚く真人とマーメイ。
真人は不意に涙を浮かべ、そっとメイヨウのお腹に手を当てた。
「そうだったのか・・・」
ぎゅっとメイヨウを抱き締める。
「フフッ・・・」
微笑むメイヨウの息が細くなってきた。
様々な夢が頭の中を巡る。
真人と海で散歩をしたかった。
ウエディングドレスを着たかった。
でも今、こうして真人の腕の中にいる。
それが嬉しかった。
「あっちで私がちゃんと育てるから・・・。私は幸せよ、お姉ちゃん」
優しくマーメイは頷く。
「ずっと前に手紙で言ったでしょ、メイヨウ。あなたは私。あなたがいなければ私はいないの。すぐに私も逝くから待っててね・・・」
マーメイの涙がメイヨウの頬に落ちた。
「うん・・・ソウハにも会えるね・・・」
と微笑むと、静かに息絶えたメイヨウ。
「あぁあああぁ~っ!」
メイヨウに抱きついて泣き叫ぶマーメイ。
「うっ・・・うっ・・・」
その二人を抱く真人の瞳からも涙が零れ落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!