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マーメイはメイヨウの亡骸を床に静かに寝かせると、爆弾をセットし始めた。机から粘土状のC4爆弾を取り出すと、そこに起爆剤となる電気雷管を差し込む。次に電気ポットのコードをニッパーで切断し導線をむき出しにして雷管に突っ込んでテープで固定した。そして延長コードをコンセントに刺しこんで持って来た。これで延長コードに起爆剤のコンセントを刺し込めば室内は全て爆破できる。自分もメイヨウも跡形もなく消える。機械室のエレベーターまで破壊しないようC4は2kgほどに調整した。
マーメイはユウ局長に電話をした。
「局長、モニターを見てください。メイヨウは死にました。公安も全員メイヨウが片付けました。これから通信室を爆破します」
と監視カメラに目線を送るマーメイ。
『そうか・・・。ご苦労だった』
「そこでお願いがあります」
『何だ』
「長谷川真人を逃がしてやって下さい。彼は何も感知していません。担当の公安もメイヨウも死んだことで接点は無くなりました」
『しかし、君との接点はどうなる?』
「私の命と引き換えの条件です・・・!」
『何を言っているマーメイ。君は死なれたら困る! その必要は無い』
「約束してください!」
『わ、分かった。だがマーメイ、早まったことをするな!』
マーメイは電話を切った。
肩で大きく息をするとメイヨウの傍らに座り込む。
後ろの壁にもたれて目を閉じた。
両手にはコンセントを用意してある。
様々なことが思い出された。
幼い頃のマーメイとメイヨウ。
ソウハのこと。
二人の確執。
数奇な人生だった。
しかし今思い出すのは楽しかったことばかり。
不意に涙が溢れ出した。
それは止まらないものとなって止め処なく溢れた。
〝そんな時にまた一緒に
またみんなで会えたなら
すべての悲しみは吹き飛んで
リセットされた明日がはじまる〟
メイヨウとソウハと唄った歌を口ずさんだ。
思い出の曲『またみんなで』だ。
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