829人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
「寂しいんでしょ? どうしようもなく心が痛むんでしょ?」
友里は真人の目を見た。
「・・・・・・」
図星だった。真人は正直な反応をしてしまっている。
(今僕はどんな顔をしているだろう)
「死んでしまったんだよ。死者に対してそんなこと言うもんじゃない」
友里から目を反らしボソリと言った真人に、
「そうね。私が何も知らないドラマがあったのよね。その時の私は何なの? その時に真人君の中に私はいたの? 奈々はいたの?」
あれ以来初めて友里がものを主張した気がした。
「そんな余裕無かった・・・」
「そうでしょうね。あの人たちは一般の世界の人じゃないもんね。それさえ教えてもらえないけど・・・。あの人たちと真人君だけの秘密だもんねっ」
「・・・・・・」
「話って探偵辞めるってことだけだったの?」
「あ、いや」
「さっきから黙ってばかりじゃない」
真人は言う決心をした。
「じゃあ言うね」
「え?」
「もう僕は普通でいられない」
「・・・何よ」
「君は全く何も悪くない。全面的に僕が悪い」
「・・・・・・」
「この家も親権も君のものだ。養育費も払う」
「真人君、何? 離婚したいの?」
「したいんじゃなくて、僕がもう誰かと暮らすことができない」
「・・・・・・」
「駄目なんだよ。君に落ち度は無いのに僕が限界なんだ!」
声を荒げて頭を抱える真人。
「すまない友里・・・それを考えてくれ。君にとっては天から石が落ちてきたようなもんだよ。だけどこのままなら君をもっと傷付けてしまいそうな気がして・・・本当にすまない・・・」
真人は顔を伏せたまま篭った声を絞った。
最初のコメントを投稿しよう!